作田くんは男らしく豊さんに対峙する。名前を貸すだけでなく、口裏も合わせてくれるつもりらしい。

「明日海さんからご結婚のお話を伺いました。おめでとうございます」
「ああ、きみは奥村望とも懇意だったな。ようやく、俺も身を固めることができそうだよ」

言葉に直接的ではないがとげがある。常に牽制するような雰囲気も伝わってくる。

「今日はどんな御用でしょう」
「きみは未来を認知していない。今後、明日海と俺が結婚することにより、未来は養女となる。笛吹家の人間となったとき、きみのような父親の存在は邪魔でね」

豊さんは険のある表情で言い放つ。

「未来には一生父親であると名乗らずにいてもらいたい。今後、未来が笛吹家を継ぐことになったとき、きみが財産などを要求してきても困るからな」

横柄な言葉に、作田くんが怒りを抑えるような表情になる。

「馬鹿にしないでもらえませんか? 確かに俺は奥村フーズの一社員です。ですが、親会社の社長一家にたかる気はありません」
「豊さん、作田くんに失礼なことは言わないでください。彼はもう関係ないと言ったはずです」

割って入る私を冷たい目で一瞥し、豊さんは言う。

「妻子がいる男性に失礼したな。作田くん、弁護士を通して書面を送る。そこに一筆書いてもらいたい。笛吹家とは関わらないと。今後、俺からもきみには関わらないし、奥村フーズ内できみの実力が正当に評価され続けることは保障する」
「わかりました」

作田くんは厳しい表情で頷いた。