豊さんと会った翌週、私は再び都内に出てきていた。
今日はお世話になっている作田くんの家を訪問するのだ。いくつか電車を乗り替え到着した作田くんの家は住宅地にたたずむ小さな戸建てだ。

「明日海さん、ご無沙汰してます」

作田良樹くんは望の中学時代からの友人だ。就職先を作田くんが奥村フーズに選んだことで、同期となった。望にとっては一番信用できる親友であり、私たち家族とも親交の深い男性だ。

現在二十五歳の彼は、先日大学時代から交際していた恋人のゆなさんと結婚したばかり。彼女のお腹には赤ちゃんがいる。新築の戸建ては、結婚祝いに双方のご両親が少しお金を出してくれ購入できたそうだ。

「作田くん、いつも弟の情報を集めてくれてありがとう。さらに今回は巻き込んでしまってごめんなさい。ゆなさんも、気分が悪いでしょう。本当にごめんなさい」

私は玄関先で早々に頭を下げた。菓子折りを持ってきたけれど、本当はこんなものじゃ足りないくらいの迷惑だと思う。

「いいえ、お気になさらず。今日は未来ちゃんにも会えて嬉しいです」

ゆなさんが未来を抱き上げ、リビングに案内してくれる。未来は、女性にはあまり人見知りをしないので、きゃっきゃと嬉しそうだ。ゆなさんのお腹が大きいのも面白いのかお腹を触ったりしている。