冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

道はまだある。ここで結婚を断り、両親も豊さんもシャットアウトしてどこか遠くに引っ越してしまえばいい。
待機児童に余裕のある地方を探して、移住すれば、未来を保育園に預けて仕事を見つけられる。未来とふたりで生きていける。

しかし、望を失った両親をこれ以上悲しませたくない。私がいなくなれば、笛吹製粉との関係がどうなるかわからないし、なにより娘と孫まで消えてしまったら両親はきっと意気消沈してしまう。望と同じ行動を取りたくない。

「豊さんと、会って話すことはできるかしら」
「明日海」
「政略結婚にしたって、もっと条件のいい女性はいるでしょう。わざわざシングルマザーと結婚したいなんて何か考えがあるのかもしれない。望に遺恨もあるはず。私の一番優先することは未来の幸せだから、一度会って話をしてみます」

未来を連れていくのは抵抗がある。しかし、隠しておくことで、妙に勘繰られたくない。
もう会うこともないと思っていた豊さんにこんな形で会うなんて。

両親は午前中のうちに帰っていった。昼食の準備をしなければ。それに午前中外遊びができなかった未来をどこかで外に連れ出してやりたい。
そんなことを考えながら、パワーが湧かず座り込んだまま。

「まあま」

未来はよちよちと歩いて寄ってきた。小さくてふっくらした身体を膝にのせ、その顔を覗き込む。
なんて可愛らしいんだろう。歩くのも上手になったし、意味が通じそうな言葉もいくつか出てきている。娘は日々成長している。

「未来、ママの未来。私たちはふたりで幸せになれるよね」

未来はよくわからないといった顔で私の頬をぺちぺちとたたいていた。