冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「でも、私には未来がいるわ」
「もちろん、それも伝えた。娘はシングルマザーで、笛吹製粉の次期社長の妻に見合うかわからない、と。そうしたら、豊さんも社長もすでにそのことを知っていてね」

父の言葉にはさすがにぎょっとした。いや、笛吹製粉側からこんな話を提案してきたのだ。私の知らないところで調査されていたとしても不思議ではない。

「明日海のことは元社員だから人となりも知っているし、シングルマザーなら不便も多いだろう、と。子どもも一緒に面倒を見るから、ぜひ嫁いできてほしいと言うんだ」

私は唇を噛み締め、未来に視線をやった。
未来はくしゃくしゃなるスカーフ型のおもちゃで遊んでいる。音が楽しいようでニコニコ笑顔だ。私と両親の会話なんて、知る由もなく可愛らしい声で何かつぶやいている。

次に私は両親を見やった。
両親は未来の父親についてどこまで確証を得ているだろう。二年前、私が否定したことをまだ信じてくれているだろうか。この子の父親によく似た容姿に不審を持っていないだろうか。
それとも、こうして豊さんへのお嫁入りの話を持ってくることで様子を伺おうとしているのだろうか。

「この子の父親は豊さんじゃないわ」

私は改めて口にする。両親がハッとした顔をし、頷いた。

「もちろん、明日海がそう言ったことを私たちは覚えているよ」

笛吹社長と豊さんが、私の子どもの存在を知っている。つまりは豊さんも未来を我が子だと疑っているのではなかろうか。だからこそ、こんな提案をしてきたのではなかろうか。