冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「私はありがたいお話だと思っているよ。笛吹社長たちはまだまだ私には会社に残って、奥村フーズを引っ張って行ってほしいと言ってくれてね。そして、ここからが問題なんだが、奥村フーズのこの先を盤石にしようと豊さんが提案してきたことがある」

言い淀む素振りを見せる父。私は豊さんの名前にどきりとするものの、平静を装った。

「なに、お父さん」
「明日海、豊さんと結婚する気はないか」

私は目を見開き凍り付いた。豊さんと結婚? 私が?

「ど、どうして?」
「有利な条件で子会社化するにも理由が必要だと。他の傘下企業の嫉妬や不平等感を煽らないためにも、豊さんと明日海が結婚することを理由にあげればいい」
「なんでそこまで。結婚なんかしなくても……!」

思わず声を荒らげてしまった。父が目を伏せ、心苦しそうに続ける。

「なんだかんだ言って、笛吹製粉にとって奥村フーズの売り上げと冷凍食品のノウハウは大きいということだろう。望の件でうちが笛吹製粉に見放されなかったのも、そこが大きい」
「名実ともに政略結婚ってこと……?」

笛吹製粉は奥村フーズを周囲の批判なしで確実に子会社化したい。跡取りを失い社長も限界を感じている奥村フーズは、笛吹製粉に頼りたい。

両社がウィンウィンの関係になるのが、私と豊さんの結婚……。