やがて、すっと父親が顔をあげた。
「明日海、大事な話があってきたんだ。奥村フーズを笛吹製粉の子会社にしてもらう方向で話が進んでいる」
両親の向かいに座り、私は言葉をなくした。奥村フーズは立ち行かなくなったということだろうか。
望の一件から立場が悪くなるのではと思われた奥村フーズは、この二年間今までと変わらない業績を維持しているはずだ。どうして今、身売りのようなことをするのだろう。
「一番は、私の気力が持たなくなってきたというところだ。望という跡取りもいなくなり、祖父や親の代から受け継いできた奥村フーズの一族経営は終わる。それなら、ここからはより安全に会社と社員を守るため、笛吹製粉の力を借りたい」
「笛吹社長と豊さんからの提案なのよ。傘下企業で子会社になりたがっている会社はたくさんあるけれど、お父さんの会社にとってはありがたい条件をいくつも提示してくれているの」
母も言い添える。
もともと、奥村フーズの売り上げのほとんどは笛吹製粉との取引からだ。しかし子会社化となれば、株式は半分以上笛吹製粉が有することとなり、経営方針や役員人事は笛吹製粉が決めることとなるだろう。父はお飾りの社長扱いされることもあり得る。
「お父さんはそれでいいの?」
「明日海、大事な話があってきたんだ。奥村フーズを笛吹製粉の子会社にしてもらう方向で話が進んでいる」
両親の向かいに座り、私は言葉をなくした。奥村フーズは立ち行かなくなったということだろうか。
望の一件から立場が悪くなるのではと思われた奥村フーズは、この二年間今までと変わらない業績を維持しているはずだ。どうして今、身売りのようなことをするのだろう。
「一番は、私の気力が持たなくなってきたというところだ。望という跡取りもいなくなり、祖父や親の代から受け継いできた奥村フーズの一族経営は終わる。それなら、ここからはより安全に会社と社員を守るため、笛吹製粉の力を借りたい」
「笛吹社長と豊さんからの提案なのよ。傘下企業で子会社になりたがっている会社はたくさんあるけれど、お父さんの会社にとってはありがたい条件をいくつも提示してくれているの」
母も言い添える。
もともと、奥村フーズの売り上げのほとんどは笛吹製粉との取引からだ。しかし子会社化となれば、株式は半分以上笛吹製粉が有することとなり、経営方針や役員人事は笛吹製粉が決めることとなるだろう。父はお飾りの社長扱いされることもあり得る。
「お父さんはそれでいいの?」



