「藍、本当にありがとう。ずっとお世話になりっぱなしなのに、私恩返しできてないよ」

藍がいたから、遠い街でひとりで出産できた。子育てと仕事ができた。
豊さんも藍に挨拶をする。

「藍さん、長く明日海と未来を支えてくれてありがとう」
「いえいえ、友達ですから」

藍は豊さんににっこり笑い、私に向き直る。

「恩返しとか言ってる場合じゃない。まだまだ友情は続くわよ。新しい企画があるの。戻ってきたら、打ち合わせするから覚悟してね」
「元気だなあ。藍は」

藍は未来をぎゅっと抱きしめ、私のこともぎゅっと抱きしめ、去って行った。

その後は、家族だけの披露宴となった。食事会の最中、母のスマホに連絡がある。

「あら! 望からだわ」

母が添付された画像を見せてくれた。お腹の大きな可世さんとボストンバッグを持っている望。望がインカメラで自撮りしたものだ。

「【陣痛が始まったので、これから病院です】だそうよ」
「おめでたいことが続きますね」

笛吹社長が嬉しそうに言ってくれ、父が早くもハンカチで涙をぬぐっていた。
和やかな家族の会には、嬉しいニュースも飛び込んできて、いっそう幸せな場となった。

披露宴後、笛吹社長は東京からお迎えに来ていた秘書の車で帰っていった。両親は私たちが宿泊するチャペルの隣のホテルに宿を取っている。
私と豊さんも未来を連れて部屋に引き上げた。