冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「未来ちゃんは一歳半か。何が好きかな。そのうちおじいちゃんともお出かけしようねえ」
「ねー」

未来がわかっているのかわかっていないのか相槌を打つのが可愛らしくて、大人三人は笑ってしまった。

大人がお茶をしながら話している間、未来は広い邸宅の居間をとてとて歩き回って散策していた。ハウスキーパーの高齢の女性が後をついてみていてくれる。
しかし、そう長く持たず飽きて騒ぎ出してしまった。豊さんが未来を抱っこ紐で抱き上げた。

「疲れて眠くなったかな。家の周りをぐるっと回ってくるよ」
「豊さん、ありがとう」

豊さんと未来が出発すると、笛吹社長が口を開いた。

「明日海さん、あらためて豊と結婚してくれてありがとう。孫の顔も見せてもらえて、感謝しているよ」
「いえ……、豊さんとは長くすれ違ってしまい、未来も私が断りもなく産んだので。結果、この前のような誤解を生む記事を出されてしまいました」
「あの記事ことは気にしなくていい。人と人がまじわるときには、誤解やすれ違いがつきものだよ。それでも豊と再会し、家庭を築いてくれたことが嬉しいんだ」

笛吹社長は詳しい事情も豊さんから聞いているはずだ。それでも、穏やかに笑っている。

「豊の母親の話はあまり聞いていないかな。あの子が中学のときに、母親が病気になってね。豊は中学から大学生まで、勉強の傍ら母親の介護をしてくれた。私が多忙な分、かなり頑張ってくれた。ハウスキーパーや介護士には頼れたとはいえ、豊はヤングケアラーといってもいい状態でね」

私の知らない豊さんの話だ。私は静かに社長の顔を見つめる。