「明日海、苦労をかけるな」
この日もマスコミを避け、深夜に帰宅した豊さんだ。私は出迎えながら、首を振る。
「私は大丈夫です。望のために中安議員を敵に回すことになってしまって申し訳ないです」
「あのような卑怯な男と縁が切れてよかったさ」
「あの会社の方は……」
私の問いに豊さんは穏やかに微笑む。
「事実無根なのは、誰もがわかってくれることだ。父も『気にするな』と言ってくれている。残念ながら、来年の陸上競技会の協賛企業からははずれてほしいという打診があったがな」
やはり影響が出ているのだ。SNSで騒がれるありもしない噂よりも、それを真に受けた人たちが笛吹製粉を拒否してくるという構造が怖い。
「大丈夫だ。これは週刊誌の影響というより、中安議員の根回しだ。あの男もこの大会に関わっているからね。他ではこういった影響は出ていない」
「豊さんが今まで積み重ねてきた信頼のおかげですね」
そう言ったものの、マスコミはまだ当分騒がしいだろう。そして、この先も事ある事に豊さんへの社会的な風当たりが強くなるのではないかと思うと、胸がつぶれそうだった。
「明日海、そんな顔をしないでほしい」
豊さんが私の頬を両手で触る。
「きみには笑っていてほしいんだ。俺の妻になったからには、誰よりも幸せにしたい。最初からつまづき気味で申し訳ないが、俺にできることはすべてする。そうして、きみと未来には笑っていてほしい」
この日もマスコミを避け、深夜に帰宅した豊さんだ。私は出迎えながら、首を振る。
「私は大丈夫です。望のために中安議員を敵に回すことになってしまって申し訳ないです」
「あのような卑怯な男と縁が切れてよかったさ」
「あの会社の方は……」
私の問いに豊さんは穏やかに微笑む。
「事実無根なのは、誰もがわかってくれることだ。父も『気にするな』と言ってくれている。残念ながら、来年の陸上競技会の協賛企業からははずれてほしいという打診があったがな」
やはり影響が出ているのだ。SNSで騒がれるありもしない噂よりも、それを真に受けた人たちが笛吹製粉を拒否してくるという構造が怖い。
「大丈夫だ。これは週刊誌の影響というより、中安議員の根回しだ。あの男もこの大会に関わっているからね。他ではこういった影響は出ていない」
「豊さんが今まで積み重ねてきた信頼のおかげですね」
そう言ったものの、マスコミはまだ当分騒がしいだろう。そして、この先も事ある事に豊さんへの社会的な風当たりが強くなるのではないかと思うと、胸がつぶれそうだった。
「明日海、そんな顔をしないでほしい」
豊さんが私の頬を両手で触る。
「きみには笑っていてほしいんだ。俺の妻になったからには、誰よりも幸せにしたい。最初からつまづき気味で申し訳ないが、俺にできることはすべてする。そうして、きみと未来には笑っていてほしい」



