冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「そんな、事実無根です！」

私は憤って強い声調で言った。電話の向こうで豊さんが低く答える。

『俺の仕事ぶりは少々目立つようだからな。週刊誌としても、面白おかしく書けただろう』

笛吹製粉の副社長である彼は、若い時分から積極的に事業拡大を手掛けてきた。秀でた容姿も含めて、妬まれる要素はある。しかし、彼のゴシップは笛吹製粉のダメージ直結するだろう。

「中安議員が書かせたんですね」
『だろうな。身内しか知らないような内容だ。しかも中安議員に都合よく脚色されている。大方今回のゴシップを理由に、俺と笛吹製粉を陥れたいのだろう』

そうだ。不貞が本当だと思われ、消費者に不買運動をされるかもしれない。国内イベントなどは、協賛企業を降りてもらいたいと打診があるかもしれない。企業としては大きな痛手になる。

『明日海、申し訳ないがしばらくはマンションの周りにマスコミが来るかもしれない。買い物などでも外出は極力避けた方がいいだろう』
「わかりました。配達や母を頼ります。……豊さんは大丈夫ですか？」
『ああ、俺は問題ない。今日もちゃんと家に帰るよ。未来が起きている間に帰れるようにする』

そう言った豊さんの声は少し明るくなっていた。それが強がっているようで、逆に気になった。