冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

教えてもらった都内の大きな病院、あきらかに一般患者が入れないような個室に可世さんは入院していた。

「可世!」

病室に入るなり、望はベッドの可世さんに駆け寄る。可世さんも腕を伸ばして望にしがみついた。

「望くん、ごめんね、ごめんね」

涙する可世さんのお腹はまだ大きい。
私も病室に入り、ここに私たちを呼び寄せた中安夫人に頭を下げた。彼女もまた頭を下げる。

「ここは私の親戚の病院、多少融通が利きます。主人には可世は過労と切迫早産で入院したと伝えてあります」

中安夫人は低く言った。政治家の妻である彼女は、良家の出身なのだろう。これほど大きな病院の親戚とは。

「望くん、お母さんが私たちの味方になってくれるって」

可世さんが言い、望が中安夫人を見つめた。

「本当ですか? ご主人は……」
「駆け落ちという方法を取ったあなたたちを完全に許したわけではありません。どれほど心配したか。でも、中安のようにあなたたちを引き離したいわけでもありません」

中安夫人は私に向き直り頭を下げた。

「いつぞやはお宅に押し掛け、大変失礼をいたしました。娘に失踪されて、気が動転しておりました。申し訳ありません。そして、昨夜も主人があなたにひどいことを言いました。重ねてお詫びします」
「いえ、当時は仕方なかったと思います。昨夜も、気にしておりません」

思いのほか真摯に謝罪され、慌ててしまった。
中安夫人の様子に嘘臭さは見られない。実際、夫に嘘をついて、可世さんを自宅から連れ出しているのだ。