冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

翌日、豊さんは午後には時間を作り、弁護士を同席の上で話し合いの場を設けた。中安議員は多忙を理由に拒否し、弁護士に任せると言い張った。
そこで、笛吹製粉の社内で話し合うこととなったそうだ。昼の時点でそういった連絡が豊さんから私に来ている。

「本来は豊さんがすることではないのに。申し訳ないよ」

望が沈鬱な表情で言う。連絡を待つために、望も我が家に来ていた。未来の遊び相手になってくれている。

「中安議員は、私たちを下に見ているから、豊さんでないと渡り合えないと思う。この件、豊さんは望を義理の弟だと思ってあたってくれているの。感謝しないとね」
「姉ちゃんと豊さんがいつの間にか思い合って、俺たちより早く子どもまで授かっていたなんて。本当に驚いたよ」

私は苦笑いして、望の前にお茶を置いた。

「私と豊さんも色々あったのよ。お互いの気持ちがわからなくて、素直になれなくて。あなたと可世さんの方が、まっすぐに行動を起こしたって意味では素直だと思う」
「いや、俺たちは本当に迷惑をかけたよ」

望はしょげた様子でうつむいた。
あの頃、たとえ豊さんが可世さんとの婚約を破棄したとしても、望と可世さんの仲は反対されただろう。実の娘だって、駒のようにしか見ていない中安議員の様子を思い出すとぞっとする。

「あれ、望、スマホ鳴ってない?」

望がポケットからスマホを取り出す。液晶を見て、驚いた声音で言う。

「可世だ!」

すぐに着信に出ると、望の表情が変わった。

「はい……はい。ええ、わかりました」

固い表情で頷き、電話を切る。

「どうしたの?」
「可世のお母さんからだった。今、病院だって。すぐに来てほしいって」

病院。身重の可世さんの姿が浮かぶ。

「行こう。私も未来を連れて行くから」

あわただしく準備をし、私たちは家を出た。