冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「望くん、もう少し待っていてくれ。ヤツを明日には対話の席に着かせる」

豊さんは望の宿泊先のホテルまで車を走らせながら言った。

「実の親だ。可世さんがひどい目にあうはずはない」
「はい、わかっています。冷静になれずにすみません。豊さんのおかげです」

望は礼を言ったけれど、本音は今すぐにでも可世さんを迎えに行きたいだろう。

「望、不安だろうけれど、今夜はゆっくり休んで。体調を崩したら闘えなくなる」
「そうだね、姉ちゃん。大丈夫、可世のためにも、無茶なことはしない」

ホテルで望を下ろし、私たちは帰路についた。
未来はこの騒ぎの中、ほとんど眠っていた。最近夜の睡眠が安定してきたせいなのか、私と豊さんがそばにいたからなのか。未来だけは場の不穏な空気に飲まれることなく、マイペースで眠っていた。それだけはよかったと思う。

「明日海、中安議員に言われたことは何も気にするな」

豊さんが運転しながら言った。

「ええ、気にしていません。愛人だなんて、やっと両想いになった私たちを馬鹿にしています」
「違いないな。……何を吹っ掛けられても問題ない。そもそも未来を授かった時期にはすでに可世たちは駆け落ちしていた。そんなのはいくらでも証明できる。万が一、向こうが訴えるなどと言っても、筋が通らない訴えは通用しない」

豊さんの言うとおり。未来が不貞の子ではないと証明するのはできる。
しかし、あれほど聞く耳を持たず、自身を守るために頭を使う人だ。どんな難癖をつけてくるかわからない。

「明日海と未来は俺が守る。信じてくれ」

私は頷き、答えた。

「信じています」