冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「そんなことはありません!」

許せなくて思わず叫んでいた。下世話というより、完全に自分たちが優位に立つための妄想だ。

「この子は豊さんとの子ですが、私たちが交際したのは望と可世さんが駆け落ちした後です」
「お姉さん、あなたの口からなんと言っても信憑性なんてないんですよ」

せせら笑うように中安議員は言う。

「もしかして、豊さんが奥村くんに指示をしたのかな? 愛人にしているおまえの姉と結婚したいから、俺の婚約者を寝取れ、なんてね」
「いい加減にしてください! 姉のことも、豊さんのことも、可世のことも侮辱しないでください!」

怒鳴り、今にも中安議員に飛び掛かりそうになっている望を豊さんが抑えた。
目で「落ち着け」と制すると、中安議員に向き合う。

「あまりに荒唐無稽で驚きました。中安先生ともあろう方が、これほどの妄言を口にされるとは。娘さんとの再会で動転しておられるのか」

その言葉が、中安議員を煽るためのものなのは私にもわかり、まんまと煽られた中安議員は顔を赤くして豊さんを睨んだ。

「お互いこれ以上は実のある対話にはならないでしょう。明日、弁護士を同席させてお話し合いをしましょう」
「ふん、私に話すことはない」
「そうおっしゃるなら、望くんが内縁の妻が胎児ごと監禁されていると警察に届けをだすでしょう。選挙が終わったばかりの先生にはあまり嬉しいお話ではないと思いますが」

怜悧なまなざしと口調で豊さんは相手を封じ込めた。これ以上話すことはないとばかりに背を向ける。私と望もそれに続いた。