冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「家出していた娘が帰ってきたんです。今、家族で再会を喜んでいるんですよ。豊さんと可世の婚約は二年以上前に解消している。もう関係ないんだ。邪魔しないでいただきたい」

狸という言葉がぴったりの中安議員は白々しくそんなことを言う。豊さんの横で、望が叫んだ。

「可世を返してください! 可世と僕は将来を誓っています。可世のお腹の子は僕の子なんです!」
「もう一度言うが、奥村望くん、きみはうちの娘をたぶらかし、汚し、子どもまで孕ませた。私たちはきみを訴えるつもりでいる」

はっと鼻で笑った中安議員は、完全に望を侮っている様子だ。

「安心したまえ。生まれてくる子に罪はない。男の子だって言うじゃないか。それなら、中安家の跡取りとして育てよう」

本気で言っているのだろうか。それでは、望は可世さんとも生まれてくる我が子とも引き離されてしまう。

「中安先生、これは一方的です。俺は望くんと可世さんの仲を応援するつもりでいます」

豊さんが言うと、中安議員は彼とその後ろにいる私をねめつけた。

「豊さん、ご結婚されたと聞いていますよ。なんでも、そこの奥村望くんのお姉さんと」

ぎくりとした。豊さんは入籍前とはいえ自身の結婚を公にしている。しかし、この人が知っていて、それを今口にするのはどういう意味なのだろう。

「弟の不始末を姉が清算したというわけでもないでしょう。案外可世と婚約中から愛人として囲っていたんじゃないですか? そうだとしたら、可世はずっと裏切られていたことになる」