望と可世さんが尋ねてきた翌日、私は未来を連れて実家を訪れていた。未来の父親について話すためだ。
父は昼休みに会社から家に戻って話を聞いてくれた。

「そうか。豊さんがおまえと未来の面倒を見ると言ったとき、なんとなくそんな気はしたんだ」

父は、感慨深そうに頷いた。膝の上では未来が遊んでいる。

「奥村フーズの子会社化するとはいえ、もっと条件のいい花嫁はいたはずなのに、なぜ明日海を、と思っていた」
「言えなくてごめんなさい。あの時は私も豊さんの真意がわからなくて、望のこともあったから口にできなかったの」
「いいのよ。この前、豊さんが未来ちゃんを可愛がってる姿を見て、私もお父さんも感じるものがあってね。こうして話してくれて嬉しいわ」

母が目頭の涙をぬぐった。私は頭を下げる。

「あらためて、豊さんと正式に入籍することになりました。未来も私と豊さんの子として籍に入ります」

本当は今日、豊さんも挨拶に来たがっていた。急だったので、後日あらためて挨拶に来ることにした。

「望も帰ってきて、嬉しいこと続きだわね」
「少し話せた?」

母は頷き、あふれた涙をハンカチで抑える。

「何度も謝ってくれてね。可世さんのお腹に赤ちゃんがいるそうで、生まれたら抱っこしてほしいって言ってたわ」