冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「ごめんなさい、豊さん」
「謝らないでくれ。誤解させたのは俺だ。もっと早く自分の気持ちに素直になって、可世との婚約を解消して、きみに好意を示していればよかった。そうすれば、可世は駆け落ちする必要もなかったし、俺はきみとふたりで未来を迎えることができた」

豊さんは未来が産まれて一年を知らない。それが本当に申し訳ないことに思えた。

「豊さん、これから家族三人で、たくさん思い出を作りましょうね」
「ああ、近いうちに未来を連れて三人で旅行しよう」


その後、もう少し粘ったけれど、望は店に現れなかった。私たちはそのままそこで夕食を済ませ、駅前に戻りホテルにチェックインした。急だったので取れたツインルームは一般客室のもの。背の高い豊さんには少し窮屈そうだ。

「未来は眠ったそうです。ほら、写真」
「ああ、本当だ」

スマホの画面には、すやすや夢の中の未来。急な外出だったので、心配していたけれど、落ち着いて食事をして眠ってくれたなら安心だ。
バッグを窓辺のテーブルに置くと、豊さんが背後から抱きしめてきた。どきりとする。

「抱きしめるだけ。いいか?」

耳朶をくすぐる豊さんの声。甘い吐息交じりのささやきは、彼がそれ以上先に進みたいのをこらえている証拠だ。
迷ったけれど、私もこらえきれず呟く。