冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

「ふたりきりで旅行したいというのは本心だ」

豊さんがさらりと言う。

「きみの気持ちを知って、まだ一日も経っていないのに浮かれているかもしれない。だけど、俺からしたら、片想いが叶った状況だ。機会があるなら、きみとふたりきりになりたい」
「ゆ、豊さん」

恥ずかしいくらい真っ直ぐな愛の言葉をささやかれて、私は顔を背けてしまった。豊さんはそれでも熱心に言う。

「未来との時間ももちろん大事だし、これからはもっともっと関わっていきたい。でも、明日海との時間もほしい。恋人として過ごす時間がほしいんだ」

そこまで言ってから、豊さんははっとしたように目を見開いた。

「すまない。下心しかないようなことを言った。今回の旅行できみに何かしようというわけじゃない。ホテルの部屋は別にとったし、節度は守る」
「そんな……そんな心配していませんよ」

そう答えながら、豊さんの誠意ある態度が嬉しくなった。私との関係を大事にしてくれているのだ。
心の隅で、少しだけ期待していたけれど、それよりも彼のそうした配慮が嬉しい。

「あ、でもお部屋は別なんですね。バッグ、ひとつにまとめちゃいました。失敗です」
「明日海さえよければ、同じ部屋に取りなおす。……昨日の夜のこともある。信用してもらえるかわからないが、何もしないと約束する」

そう言った豊さんの頬はわずかに赤かった。可愛いと思ったけれど口にせず、にまにまと笑ってしまいそうになるのを耐えるのだった。