唾液を混ぜ合わせ、深く重ね合わせる頃には、互いの身体は火照りしっかり隙間なく密着している。
このまま、豊さんともう一度……? 
いいのだろうか。いや、彼は私を欲しがってくれている。私も彼がほしい。

「豊さん……」

彼の背にしがみついた瞬間、和室で物音が聞こえた。
次に未来の「うええええん」という泣き声。私と豊さんは思わず身体を離した。

「み、未来!」

乱れた襟とスカートを直しつつ、和室のふすまを開けると、未来がふとんの上に立っていた。いつも使っている枕を掴んでいる。寝ぼけているようだ。

「まあま~!」
「はいはい、ママですよ」

抱き上げてよしよしとゆする。リビングから豊さんが和室を覗き込んだ。少し気まずそうな顔をしている。

「明日海、すまない。急にあんなこと」
「い、いえ!」

こちらも恥ずかしくて顔が見られないでいると、豊さんが和室に入ってきた。そして、未来と私を丸ごと抱きしめた。

「パパも、こうしていいか?」
「豊さん……」

またしてもにじんできた涙を豊さんがぬぐってくれる。未来は豊さんの顔を見て、泣き止んだ。

「ぱっぱ」

そう言ってにっこり笑う。明らかに豊さんを指した言葉だった。
未来はちゃんと理解していた。私たちよりもはっきりと、私たちが家族であると。

「ああ、未来のパパだよ」

豊さんが未来の頭に頬ずりする。

「ずっとずっと、未来の本当のパパになりたかったんだ」

私はまた泣いてしまい、豊さんの目にも涙が光っていた。