冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす

マンションに帰り着いたのは二十一時過ぎ。
鍵を開け、玄関に入り電気がついていること、豊さんの靴があることに驚いた。もっと遅くなるかと思っていた。
さっとスマホを取り出してみるが、なんの連絡も入っていない。

「おかえりなさい」

リビングに入りながら声をかけた。豊さんはダイニングテーブルについていた。ワイシャツにスラックス。仕事から帰って間もなくといった様子だ。

「どこへ?」

低く尋ねられた。今まで私と未来は夜間に外出などしていない。訝しく思っても無理はないだろう。

「実家に。遅くなってしまい、すみません」

まさかこんなに早く帰ってくるなんて思いませんでした。そんなふうに言ってしまえば、彼の留守を狙っていたと言わんばかり。絶対に言えない。
未来を和室の布団に下ろした。未来はぐっすり眠っていて起きる気配もない。パジャマに着替えさせるのは諦めよう。

ふすまをしめて戻ってくると、豊さんが私と向かい合う格好で立っていた。どきりとするが、必死に平静を装った。

「本当に実家か?」

質問に私は黙った。この人は何か勘づいているようだ。

「今日、奥村社長と会った。今夜は奥様と外食だと言っていたぞ。それなのに、どうしてきみは実家などと言う」

口をつぐむ私に、豊さんは詰問口調で尋ねる。

「作田良樹にあっていたのか?」

私の沈黙は肯定だった。ここまで露見し、もう嘘はつけない。だけど、望のことは口にできない。