囁くように言われ、首にヒヤリと冷たいものが触れる。冷んやりしていたのはネックレスのチェーンだった。バラの花がモチーフになっている。

「綺麗……。毎年プレゼントをくれてありがとう」

あたしがそう言うと、リオンは少し照れ臭そうに笑った後、頬に触れる。

「エマが笑ってくれたら、それだけで嬉しいんだ。来年も、再来年も、君のためにプレゼントを選びたいな」

えっ、それって……。あたしがどういう意味なのかを赤くなり始めた顔で聞こうとした刹那、ウェイターがコース料理の前菜を運んでくる。タイミング悪いな……。

「すごくおいしそうだよ」

リオンがそう言って笑い、ナイフとフォークを手に持ち始めたから、あたしも食べ始めざるを得なかった。人気のフレンチレストランなだけあって、見た目も味も完璧だったけど……。

デザートのクレープシュゼットを食べ終えた後、あたしたちはレストランを出た。料理も夜景も素敵で、最高のバレンタインデーのはずなんだけど、リオンの言葉が離れない。