「あっ!」

わたしが短冊を手にするより早く、誰かにそれを取られてしまった。


「こっ、昂輝っ!!」


わたしの短冊を勝手に取ったのは、幼なじみの昂輝だった。


ついさっきまで友達と喋っていたはずなのに、いつの間にこっちに来たの!?

ていうか、それを本人に見られたらまずいんだけど。


「ねぇ昂輝。それ返してよ!」


わたしは短冊に手を伸ばすが、昂輝が短冊を自身の頭よりも更に高く上げたせいでかすりもしなかった。


「俺がおとなしく返すとでも思った? ひよこちゃん」


にやりと、悪戯っぽく笑う昂輝。


彼のそんな顔にすらときめいてしまうわたしは、片想いにおいては重症なのだろうか。


「あのねぇ。前から何度も言ってるけど。わたしの名前は“ひよこ”じゃなくて、“ひより”だから」

「あれ? そうだったっけ? 俺はてっきり、ひよこかと」


いつものことながら、ほんとムカつく〜。


腹が立ったわたしは、何度かぴょんぴょんとジャンプして、短冊を取り返そうと試みる。