昂輝が、わたしのほうを真っ直ぐ見つめる。


『キーホルダー、見つかって良かったな。それ、ひよの大事なものなんだろ? もうなくすなよ』


そう言って、わたしのキーホルダーの猫の頭をなでる昂輝の優しい顔に、このとき初めて胸が高鳴るのを感じた。



***



多分、キーホルダーを見つけてくれたあのときから、わたしは昂輝のことが気になるようになり、だんだんと好きになっていったんだ。


あのときの猫のキーホルダーは、中学3年になった今も、わたしのスクールバッグについている。



昂輝は、わたしには基本意地悪だけど。


わたしが数学で分からない問題を、バカだなぁと言いながらも丁寧に教えてくれたり。


突然の雨に困っていたわたしに、傘を貸してくれたこともあった。


ちゃんと、優しいところもあるって知っているからこそ、何度嫌なことをされてもやっぱり……わたしは彼を嫌いにはなれないんだ。