最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


「俺達は別れたんだ。それなのに持っていられてもこっちも困る。だから処分したなら良かったよ」

 冷めた目で私を見下ろす凪は、付き合っていた頃とはまるで別人みたい。そんな彼に目を逸らして、何も言えなくなる。どんな言い訳をしたところで、この人にはもう興味がないんだとわかるから。
 今日はやっぱりツイてない……

 凪との険悪なムードに言い返す事も出来ずにでいると、そこに割って入って助け舟を出してくれたのは桐葉さんだった。

「おい、打ち合わせに行くぞ」
「あ、はいっ」

 鞄から出した資料一式と筆記用具に仕事用のタブレットも手にすると、凪に『ごめん……』と一言だけ置いて席を立ち、逃げるように桐葉さんの元へと駆け寄る。

 振り返る事をしなかった私は、凪が見つめていたとも知らずにこの場から離れていった――――

***

「あの……さっきはありがとうございました」

 事務所から出て私は、桐葉さんと同じペースで歩きながらお礼を伝えるも、こっちを見る事をせず『何の事だ』と素知らぬ顔をしてくれた。
 この人にとっては本当にただの偶然だったのかもしれない。

 ***


 思い出と共に名刺入れを川に流してから1週間、営業に出る事も少なくほぼ事務処理などに努めていたおかげで、名刺を使う機会はほとんどなく過ごす事ができ――――