最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


 空っぽになったグラス。
 おかわりなんて頼んでいないのに、マスターは気を利かせて同じお酒を出してくれる。
 ねぇ、これって続きを話せてって事? ……よね。
 桐葉さんと、なぜかマスターまでも私に注目する中、グラスに視線を落とし滴る水滴に触れながら話を続けた。

「……彼と付き合ったのと同じくらいの時期に、マネージャーになる話が出たんです。挑戦してみたくて引き受けましたが、責任もあるし覚える事も多く、毎日必死で頭の中は常に仕事の事ばかり。休みの日までも職場に行って働いていました」

 大まかなにそこまで説明すると、チラリと桐葉さんに視線を返してみる。何か反応するのかな? と待ってみるも、彼は何も言わず黙って真剣な顔で聴いているだけ。
 『このまま話せ』という意味なんだと捉えて、私は水分補給にお酒を一口飲んでまた話進めた。

「1年が経つ頃には仕事にも慣れてきて、マネージャーとしても『軌道に乗ってきたな』ってわかるくらいは順調でした。だけど今度は仕事自体が楽しくなってきて……」

 『彼氏との時間を作らず仕事に費やしました』と言えずに言葉が詰まってしまう。
 こうやって口に出して説明していると、改めて”凪を放置していたんだ”って自分自身に気付かされる。だから幻滅されたんだと……痛い程に思い知る。