今飲んでるお酒を最後に今日はもう帰ろうとグラスを手に取ると、桐葉さんが察したらしく意外な言葉を投げかけてきた。

「1杯奢ってやるから少し付き合え」
「・・・は?」

 ビックリしすぎて彼の方を向きながら固まってしまった。

 待って、なんの誘い? え、誘いなの? これ。

「いきなりなんですか……」
「いいから。マスター、彼女にもう1杯頼む」
「え、ちょっ」

 私の許可なんてお構いなく桐葉さんはマスターに勝手に注文してくれて、受けたマスターも『かしこまりました』と笑顔で即答まで。
 いや私の許可は? OKしてませんけど?

 文句の1つも言う前に、待ってましたとマスターが別のお酒を私の前に差し出した。無色透明の液体にライムが1枚入っていて、これは何か? と尋ねるとマスターは『カミカゼ』というウォッカだと答える。
 どうしてこのお酒なんだろ? と首を傾げて疑問を投げかけてみても、マスターは笑顔のままそれ以上は何も答えない。

「お疲れ」

 隣に座る桐葉さんにも注文していた”いつもの”が出され、ロックグラスを手に持ち少し傾けて、私に『乾杯』を促した。

「お疲れさま……です」

 抵抗しようにも、2人に押し流されるまま結局居座る羽目になる事に・・・。
 こうなってしまえば仕方ないと覚悟するしかなかった。