私にずっと言わずに溜めていたものを吐き出すかのように、凪は続ける。

「茉莉愛はこの数か月、俺の事を心配してくれていた。話もきいてくれたし相談にも乗ってくれた。彼女が俺を……支えてくれたんだ」

 言葉が出ずに黙って聞いていたけれど、凪のこの言葉にだけはピクリと体が反応出来てようやく金縛りが解けたように口が開く。

「相談って……する相手は付き合ってた私じゃないの? どうして彼女なの……」

 喋り始めるとついさっきまで全身が強張って、ショックに打ちひしがれていた気持ちが少しずつ緩和していき、思っている事が言えてくる。

「確かに凪と付き合ったばかりの頃はマネージャーに任命されたばかりで、仕事の量も気持ちにも余裕がなかった。だから凪との事は二の次にしてしまったと思う。それで傷つけていた事さえも、今の今まで気付かなかった。それは責められる事じゃない……。だけどせめてっ! 悩んでいた事は話して欲しかったっ」
「出来るわけないだろ! 仕事ばかりで俺に見向きもしなかったんだから」
「そんな事っ」
「あるんだよ! 少なくとも俺には、そう見えていたんだ」
「……っ」

 お互い、思いをぶつけて声を張り合った。反論しようとも思ったけれど、目を伏せて哀しそうな凪の一言に言い返す言葉が見つからない。