最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


 そんなのを言われた後だと、仕事がやりづたくて仕方ない。茉莉愛ちゃんの姿はあれから1度も見ていないし、心なしかスタッフ達の視線が冷たく感じる。風評被害も良いとこ。
 
 仕事がひと段落したのは18時過ぎ。こんな時に限って残業がなく定時に終わってしまったから、『仕事で遅くなる』って言い訳で逃げだすのは不可能。

 終始『嫌だなぁ』とボヤきながらヤル気の無さから帰る支度をノロノロと済ませ、仁菜や他のスタッフに軽く挨拶もすると社員証のバーコードで退勤を押した。
 この会社は、職員は全員事務所の裏口から出退勤をして外に出る決まりがあり、式場に入る正門を(くぐ)れるのはあくまで 新郎新婦やゲスト・来客だけと徹底してしている。

 凪といつも待ち合わせしていたのは、裏口からまわって正門の横。高くそびえる門は白色でカラフルな造花をあしらっていて、写真映えするため前撮りにも人気のスポットになっている。
 その前で待ち合わせだなんて、付き合ったばかりの頃はただ一緒に帰るだけでも、思わず笑みが込み上げるほどだった。

 それなのに、今はこんなにも気持ちが前に進まないなんて……

 重い足取りで正門近くまで歩みを進めると、あの頃のように凪が同じ場所に立っていた。
 最後にここで待ち合わせたのは別れを切り出された日だったけど、今日は別の理由で顔を合わせないといけないなんて。