仕事とプライベートをしっかり切り離して考えていたつもりでやってきたけれど、実際はそうじゃなかったのかもしれない。恋愛って大人になっても簡単じゃないし上手くいかないーーーー
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仁菜は次の仕事までまだ少し時間があるからと、お昼を食べる私に付き合って椅子を私の前に移動してまで話を聞いてくれて、他愛もない話題で彼女と喋っていると少し気が紛れた。
それなのに、悪夢は再び訪れようとしている。
事務所のドアが開くのがわかり、ついそちらに目線がいき、それに釣られるように仁菜も振り返って入ってきた人物を見た。
「凪……」
神妙な表情をする彼に、仁菜が気まずそうに『じゃ、じゃぁ先に仕事に戻るね』と席を立つが、凪が制止。
「別にいいよ。すぐ終わるし」
棘のある言い方に、仁菜は私に顔を向け『私も?』と口パクしながら驚いた表情をするから、首を縦に振りながら苦笑いで答えるしか出来なかった。
「瑠歌、仕事が終わったら話がある」
「え、話……?」
「終わったら外で待ってる」
ただその一言だけを捨て台詞のように吐いて、こっちの返事を聞く前に彼は出ていってしまった。
なんの話かなんて、だいたい想像がつく。茉莉愛ちゃんとの内容を聞かれたり責め立てたり、たぶんそういう事なんだろう。



