室内に響いてしまう私の取り乱した声。
一瞬でマズいと思い一気にクールダウンし冷静になると、力を込めていた拳を解いて茉莉愛ちゃんに目線を向け、愕然とした。
彼女の目は据わっていて、口は結んで閉じたまま《《無》》の表情。“目は口ほどに物を言う”って聞くけれど、本当にそれ。言葉として何も発していないのに、言いたい事が伝わってくる。
『可哀想に……』なんて、哀れんだ瞳で見つめるのはやめて。このコにだけはそんなの―――
完全に茉莉愛ちゃんのペースに引きずり込まれて冷静さを失っていたせいか、騒ぎを嗅ぎ付けた数人の女性スタッフが何事かと入口に集まりザワついている状況に気付かなかった。
最悪。まさか職場の後輩達に全部聞かれちゃった……?
「こ、この話はもうこの辺で――」
終わりにしようと言い掛けると、突然茉莉愛ちゃんが自分の洋服の胸元をキュッと掴んで俯いてしまった。
え、何? どうしたっていうの?
「まり――」
「茉莉愛!」
私が名前を呼ぼうとすると、すかさず遮った声の相手は……凪。
「平気か!?」
一目散に茉莉愛ちゃんの元に駆け寄り、心配そうに背中をさすっては『もう大丈夫だから落ち着いて』なんて優しい声を掛け、彼女もまたコクコクと小さく数回頷いて応えている。
”もう大丈夫だから”って何が? 『俺が来たから』って意味?



