それを私に言うなんて……よくそんな事―――
「それでその、私……告白しようと思っていて……」
仕事を中断したその手は、デスクの上でモジモジしながら指を絡ませ合って、どこか躊躇う様子も伺える。だけど言ってる事はストレート。
よくそんな告白を私に出来るなと思う。《《元カノ》》の私に。それとも元カノだから言った?
どちらにしろこれ以上聞いてても気分が良いものじゃない。彼女の話なんて無視してここから立ち去ればいいのに……なのに私は馬鹿だ。
「……今もう付き合っていたんだと思ったけど」
”我慢する”という意志が弱い。声が、口が勝手に動いてしまい、聞いてしまう。相手をしてしまう。もっと後先を考えるべきなのに。
「すでに《《そういう事》》をしているようだから、もう付き合っているんだと思ったんだけどね。違ったんだ」
完全に嫌味返し。5歳も離れた後輩相手に酷いとは思ったけど、黙って自分の中に留めてはおけなかった。
茉莉愛ちゃんはまさか私がその事に触れるとは思わなかったらしく、モジモジしていた手を止め、目を大きく開けて固まっている。
”そういう事”って、そう。凪と寝たって意味。別れ話の際に彼はハッキリとは答えなかったけど、あの反応でわかったから。だからすでに《《事は済んでる》》ってわけ。
この事を聞いて、茉莉愛ちゃんはどう反応するだろう。



