だけどまずい、言いすぎた。
私が興奮しているように見えたらしく、瞬きを数回繰り返しながら言葉を失っている。
そんな顔を見れば嫌でも熱が冷めるもの。警戒心が強すぎた事に後悔が押し寄せる。
「ご、ごめん。変な言い方したよね。でも本当に失くしただけだから」
表情が強張っているのは自分でもわかる。口を開けば下手な事を言い兼ねなくて、私は1秒でも早くこの場から離れた来て仕方なかった。
「じゃ、じゃぁ打ち合わせがあるから私は行くね」
仕事を口実に書類一式を手に、逃げるように立ち上がり席を離れようとした、ほぼ同時のこと。
「あの、彼とは……」
口籠らせながらモゾモゾと聞こえた彼女の声が耳に入ってきた……気がした。
なんだろ? と茉莉愛ちゃんの方を向いて聞き返すように首を傾げると、俯き加減だった彼女も顔をあげ真っ直ぐ私を見て言う。
「凪くんとは……本当に別れたんですよね?」
「え……」
恐れていた言葉が返ってきた。覚悟はしていたけれど、まさかこんなにストレートに来るなんて―――
どう答えたらいいのか迷って口を噤んでいると、彼女は端を発したように続ける。
「私っ、凪くんの事が好きなんです! だから棗さんが彼と別れてくれのならちゃんと向き合えるんです!」
興奮のあまり息継ぎを忘れる勢いから、その必死さが嫌でも伝わってくる。



