スポットライトが主役の2人を照らす奥で、会場内にも変化が起きていた。

「これって、プロジェクションマッピング……?」

 全面の壁や天井、さらには床まで色鮮やかな四季折々の景色を光照らしている。どうやら支配人がやりたかった事はこれだったみたい。私達と別れてから照明を担当しているスタッフに頼んだのだろうけど、どうしてこんな勝手な事を。

「上手くいったみたいだな」
「桐葉さんっ」

 新郎新婦が入場後、私も会場内の隅へと移動し式の様子を伺っているところへ、一仕事を終えた彼が何食わぬ顔で戻ってきた。

「これはどういうつもりですか? 私は何も聞いていませんけど」

 若干イラっとしていたけれど、まわりに聞かれてもマズイと思い声を抑えて訊ねてみるが、彼はまるで他人事のように白々しい態度で軽く流す。

「当たり前だ。言ってないんだからな」
「アナタねぇ!」

 思わず声を上げそうになるも、私達から1番近くにテーブル席に座る親族がこちらに顔を向けたから、苦笑いを浮かべながら軽く会釈して誤魔化した。

「どうしてこんな勝手な事をしたんですか。それも料金を貰わないなんて、サービスが過ぎます」

 ギリギリ精一杯に声を押し殺し表情も笑顔を崩さないよう必死に取り繕うも、怒鳴りたい気持ちで正直いっぱいだった。