振り返る桐葉さんはビックリした顔をしている。
それもそうだ。話は終わって解散する流れなのに、私は今どうして彼を止めたの。それに《《支配人》》じゃなく咄嗟に苗字で呼んでしまったし……私も酔っているのかな。
「どうかしたか……?」
心配そうに見つめる彼の表情は穏やかで、どこか優しさを感じて最初の頃の事を思い出す。
そう……この人と仕事で出会ってから、こんな優しい表情もするんだって最近知ってきた。
凪や茉莉愛ちゃんとの出来事があって、色んな修羅場を見られて。だけど彼は深くは干渉せず多くは言及してこなかった。それが私にとっても有り難かったし、だからこそ心の内を話してきた。
たぶん私も桐葉さんに“安心感”を感じていたんだと思う。
「私も、支配人といると安心……します。元カレの件でも随分助けてもらいましたし、感謝しています……ってお礼を言おうと思って……」
ありきたりな返答でたいした内容でもなく、これだけの為にわざわざ呼び止めてしまった事に少し気まずくなり、会釈するように見せ掛けて下を向いた。
すると桐葉さんはまさかの《《その件》》に触れてきた。
「あの男と今はどうなんだ? 吹っ切れたのか?」
「え・・・っと・・それは・・・」
ここで凪の話題が出るとは思いもしなかったから完全に油断し、しどろもどろに目も泳ぐ。



