「俺が話すって言ったんだ。だからお前が気にする必要はない。それに……」
そう言い掛けて桐葉さんは一瞬躊躇いを見せるも、私の方に顔を向け力強い言葉で続けた。
「棗には誤解して欲しくなかった」
「誤解……?」
「あの写真のせいで今でも真夜と付き合っているとか、好きでいるとかそういう風に思って欲しくなかったんだ」
「そう……なんですか」
私に伝えたかった事って……そういう意味だったの?
でもどうして私なんだろ。付き合っている訳でもないのに。
それに、もう1つ疑問が残る。
「確かに私は2人がヨリを戻したんだと思いました。だって支配人の様子が変でしたもん。人目を気にして隠れるように杉森さんとコソコソしてましたし、あれじゃぁ誰だって勘違いしますよ」
この際だから思った事を素直に言ってみると、桐葉さんはまた慌てた様子で声を張った。
「別にコソコソしていた訳じゃない! アイツが昔みたいに嫌がらせをしていないか、何の目的でここに来たのか聞いてただけだ!」
「聞いてただけにしては怪しかったですね。私の事も避けていたみたいですし」
「それはっ」
半ば勢い良く否定してきたかと思うと、突然急ブレーキ。困惑しているのが表情からもわかる。
「やっぱ避けていたんだ……」
疑問が確信に変わった。



