「好きだと言われてからその気持ちに応えるまでずっと待たせていたのに、ようやく想いを伝えた日に失うなんて、考えてもいなかった……悔やんでも悔やみきれない」
その時の事を思い出しながら話しているのか、グラスを持つ手に力が入っているのがわかる。
「当時は混乱も大きかったが、喪失感がヤバかった」
桐葉さんの口から『ヤバい』だなんて普段絶対聞く事ないのに。
それくらい彼女の事……
「今でも忘れられないんですね」
そう無意識に言った自分の発言にハッとしすぐに謝罪。
「すみませんっ また私余計な事っ」
忘れられないのなんて当たり前なのに、私は何を言っているんだろ。さっきまで一緒にいた大切な人が次にはもうこの世にいなくて、最期に言葉を掛ける事も顔も見れなかったんだから。
それがましてや恋人なら、桐葉さんの心の傷は深いに決まってる。
「いや、さすがに長い年月が経ってるから今は落ち着いた。まぁ……それもあって未だに恋人を作ろうとは思えないんだが」
「そう……だったんですか」
桐葉さんはただの女嫌いって訳じゃなかったんだ。
真夜さんの事もあったけど、真昼さんとの死別を経験してるからトラウマになっているのかもしれない。
『姉にまで手を出してた』なんて酷い事を言ったのは申し訳なかったな……



