「ごほっ」
予想外の声のボリュームと唐突な謝罪に、思わず飲んでいたお酒を吹き出す寸前でかろうじて飲み込んだ。
良かった、マスターに吹きかけなくて。
そんな事より急にどうしたの? なぜ謝罪? 謝られるような事をされた覚えはないよ?
「ビックリした……なんですか、いきなり」
「悪い。真夜の日頃の言動に迷惑を掛けているんじゃないかと思ってな」
「は、はぁ……」
なるほど、そういう事か。
ヨリを戻した謝罪かと思った。───って、それでも謝られるは必要ないよな。
「まぁ確かに迷惑といえば迷惑ですが、別に支配人が悪い訳ではないですし」
「いや、しかしな……。アイツが何を考えているのか、正直今だにわからないんだ。だが俺がいなければウチで働く理由はなかったはずだ」
「理由……」
確かにそう思う。
杉森さんの態度からして桐葉さんを追い掛けてもう1度恋仲になりたいって、100%そういう理由だってわかる。じゃなきゃあんなに敵意を向けないだろうし。
だけど当の本人である桐葉さん自身もわかっていないって事は、ヨリを戻したって線は消えた……?
それなら少しホッとしたな……
って、どうして安心しているんだろ、私。
「あの女に何かされてないか? 襲われたり嫌がらせされたり」
「襲われたりって、そんな犯罪めいた事なんてされていませんよ」
完全に別の意味で危ない人じゃん。
それに私は桐葉さんに謝ってもらいたい訳じゃない。真実を知りたいだけ───



