そう。私が最初に見た杉森さんは、桐葉さんの部屋で見たあの写真だったと───
「お前なぜそれをっ」
声を上ずらせ焦る様子の桐葉さんに対し、杉森さんは勝ち誇った顔で『あなたの弱味は握っているわ』とでも言いたげに鼻で笑っている。
桐葉さんの態度からしてもこの写真が彼に何らかの影響力をもたらしているのは間違いない。そしてたぶんこれが、切り札。
私が杉森さんと会った時、妙に“初めて”を感じなかった。
雑誌は見なかったけれど、噂を耳にしていたから彼女の存在自体は知っていた。それなのに、既に以前《《何か》》で見た事があったような気がしてモヤっとしていたのは、この事だったんだ……。
あの日、桐葉さんの部屋で見たのは一瞬だったからすぐに思い出す事が出来なかったけど、まさかここで《《本人》》から見せられるとは想像もしてなかっただけに色々と驚くばかり。
でも疑問が残る。
あれほど桐葉さんは《《彼女》》を拒絶していたはず。にも関わらず、どうしてあの写真を持っていたのか。どんな意味があるのか。この人といったいどういう関係なんだろうか。
「やっぱりまだ大切なんだね」
「……っ」
さっきまでの威勢ある言い方とは違い、少し柔らかい口調で語りかけるように言う杉森さん。けれど桐葉さんは何も言い返さず焦りの表情を浮かべ眉を顰めてただジッと唇を噛み締めている。
こんなに押されてる彼を見る事は、これが最初で最後かもしれない───



