あれから結局、凪からの告白に対して私は何も答えないまま逃げるように帰ってしまい、それからなんとなく気まずくて彼を避けるようになった。
 まぁ仕事以外で話し掛けてこなくなったところを見ると、向こうも避けられている事には気づいたのかも。

 正直、凪とどんな顔を合わせたらいいのか、普通に話すってどうやったらいいのかわからない。そもそも《《普通》》って何? ナチュラルな態度ってどうやったっけ?
 

 茉莉愛ちゃんの一件があった梅雨が過ぎ、凪との関係も有耶無耶にギクシャクしたまま日々の仕事に追われ、気付いたら夏、真っ只中。

 7月、8月は猛暑が続くため自社(うち)は結婚式を挙げる人が少なくてあまり人気がない。逆に秋や春に向けて計画する人が多く、予約のための見学に来る人が多い。

 土日は比較的見学者が多いけれど、特に今日は平日にも関わらず朝から来客が重なって忙しく時間に追われていた。

 スタッフがそれぞれの来客の対応にバタバタしている中、突然やってきた招かざる客にまた厄介な問題に巻き込まれる羽目になるなんて、この時の私は想像もしていなかった───

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 それは午後3時頃の出来事。
 私は事務所で1人仕事をしていたけれど、ようやく自分の仕事をある程度片付けられ、珈琲でも飲んで一息入れようかと伸びをした時だ。