どうしてそこで私が出てくるの?
桐葉さんがスタッフの一大事にすぐに対処したのは“支配人”という立場的に責任があるからで、それが今回たまたま私だっただけ。
他に理由なんて思い当たらないのに。
「私だからって、どういう意味?」
妙に引っ掛かった凪の一言に、疑問をぶつけずにはいられなかった。
けれど凪は、感情の籠ってない瞳で私を見つめながら聞き返す。
「瑠歌は気付いてない?」
「え……?」
私が気付いてない事って、なに?
凪が言わんとしている事が私には伝わらなかった。
それに……どうして彼が哀しげに怒った顔をしているのかも。
「瑠歌と支配人って、さ……」
躊躇い気味に何かを言いかけて口を開いたけれど、すぐに私から目を逸らして口を噤んでしまう。
「ごめん、変なこと言った。忘れて」
最後まで言わず、含みのある言い方で中途半端にやめてしまう凪に、こっちは気になって気持ち悪さだけが残る。
でもなぜだかこれ以上は触れてはいけない気がして、深く聞きだそうとは思えなかった。
結局。凪が何を言おうとしていたのか最後までわからないまま、あのあと彼は事務所を出ていき私も帰宅。
『仕事をしなきゃ』って一心で必死だったおかげか、帰宅後アドレナリンが切れてしまいダウンし、疲れと怪我による身体へのダメージが一気に押し寄せ、次の日はベッドから起き上がれず仕事を休んだ。



