このままここでこうしていても、他の人が見たらまた驚かれて余計な心配を掛けるだけになってしまうと思い、ひとまず頑張って立ち上がろうと試みる。

 だけど見つかってしまった。

「棗っ!?」

 昨日と同様、背後から聞こえてきた私を呼ぶ桐葉さんの声にまたハッとさせられた。

「大丈夫か!?」

 振り返る前に既に彼は私の元へと駆け寄ってきて、後ろからではなく今度は階段を視界から遮るように私の前で手を差し伸べてくれる。

「気分でも悪いのか!?」
「いえ……そういう訳じゃないんですけどね……」

 見えていた階段を遮ってくれたおかげで少し落ち着いたけれど、彼に『トラウマで怖くなりました』とは言いづらくて目を反らしながら有耶無耶に返事をした。

 だけど桐葉さんにそれが通用するはずもなく、ムッと眉間に皺を寄せながら強めの口調で説教が入る。

「だから今日は休めと言ったんだ。調子が悪いなら無理をするな。取り返しがつかなくなったらどうする!」

 どうやら打ちどころが悪くて今になって症状が表れたんじゃないかと心配しているみたいで、そこに対して怒っているよう。
 確かに彼の言う事は間違っていないし怒るのも無理はないけれど、でもそうじゃないからな。

 誤解したままだとマズイかもしれない……
 そう判断し、私は本当の事を伝える事に。

「思い出したら怖くなってしまって……」