そして茉莉愛ちゃんも……
彼女はその場で腰を抜かし、目を大きく見開いたままガタガタと全身を震わせてへたりこんでいる。
まさかこんな事になるなんて本人も思わなかったんだろう。これは事故でわざとじゃないのはわかっている。だからこそ、人が転げ落ちるところなんて目の当たりにしてしまったら、恐怖で動けなくなって当然かもしれない。
「棗、起き上がれるか?」
「頑張ってみます……」
桐葉さんの手を借りてまた痛みを堪えながら上体を起こすと、今度は上手くいって階段の手すり部分に寄りかかるように座る事が出来た。
「この段を全部落ちたのか……」
「でも緩やかな段差だったからそれほど大事には至りませんでした」
じっと険しい目つきで階段を見上げる桐葉さんに、そう言って安心させようと思ったけれど、それでも彼の表情は厳しいまま。
それは怒っているようにも見えた。
何に対してはわからない。
だけど彼の視線の先には凪の姿があり、凪もまた、唇を噛み締めながら私と桐葉さんをジッと見つめていた。
それから少しするとタクシーが到着。私は断固として拒否したにも関わらず、桐葉さんは半強引に私を抱き抱えて一緒にタクシーに乗り込んだ。
そんな漫画みたいな事、恥ずかしすぎて死にそう……



