痛みを堪えながら起き上がろうと奮闘していると。

「棗!!」

 背後から雨音にも負けない勢いで私を呼ぶ声に、ビクッと体が反応してしまう。

「棗っ!」
「支配人……?」

 すぐさま駆け寄ってきたのは、慌てた様子で血相を変えた桐葉さん。
 傘もささず、スーツが濡れるのもお構いなしに地面に膝をついて私の背中から腕を回す。

「しっかりしろっ! 大丈夫か!?」
「あ、はい……平気です……」

 あまりに必死に声を掛けるから逆に圧倒されてしまい、まるで大丈夫じゃなさそうな返事になる。すると彼の表情からは更に焦りの色が見え、支える手に力が籠もっていく。

「頭は打ったのか? 吐き気とか具合はどうだ、めまいとか起きてるのか?」

 急に過保護になったみたいに次々と心配の声を掛けてくるから、首を横に降るのが必死。  

「すぐ病院に連れてくから、少し待ってろ!」

 『誰かタクシーを呼べ!』とまた大きな声を上げると、数人のスタッフの返事が耳に入る。それで気づいた。いつの間にか周りにたくさん人が集まっていた事に。

 階段上にも何人かが私の方を見下ろしていて、雨で視界が悪いけどみんな強張った表情をしているのはなんとなくわかった。

 階段上にも何人かが私の方を見下ろしていて、雨で視界が悪いけどみんな強張った表情をしているのはなんとなくわかった。