彼女の方が図星だったんだろう。
 そしてまさか《《私に》》そこを突っ込まれるとも思っていなかったのかもしれない。
 滲み出る憎悪感がわかりやすく伝わってくる。

「そんなの……棗さんの負け惜しみじゃないですかっ」

 余裕のない顔つきで必死に訴えてくるけれど、負け惜しみはどっちだろ。
 こうなると何を言っても効果はないように思うから、締めくくりのまとめだけを伝えた。

「あんまり調子に乗っていると、いずれ自分の首を締める事になるから気をつけて」

 上りかけた最後の1段に足を掛け、茉莉愛ちゃんが立っている1番上まであと1歩分にまで来たときだ。

「そういうところが……」

 俯いてボソッと呟く茉莉愛ちゃんの声は雨音で最後まで聞き取れず『はい?』と聞き返すと、彼女は顔を上げて鬼の形相で攻め立てた。

「あなたのそういうところが大っ嫌いなの!」

 感情のままに大声で怒鳴られて、一瞬ビクッと肩が震える。
 そうだとは初めから知っていても、面と向かって言われるとさすがに傷もつく。

「凪くんを手に入れたのだって、彼に興味があったわけじゃない! あなたが―――」

 途中まで言うと、これ以上は言いたくなかったのか急に口を噤んでしまい『なんでもない』と背中を向けてしまった。

「何? 私がどうしたって言うの?」

 だけど私は最後まで聞きたくなって、最後の1段も上りきって”行かせまい”と彼女の左腕を掴んだ。