しかし彼女は鼻でフンッと嘲笑いながら、なんて事ないように答える。
「勘違いしないでくださいよ。みんなが私に好意を持ってくれるんですよ？」
「は？」
「私だって別に遊びたくて遊んでいるわけじゃないですけど、でも仕方ないじゃないですか。《《お客様のご依頼は》》絶対なんですから」
悪びれる様子など微塵もなく悪魔の微笑みを浮かべ、私の方へと歩きながらしれっと言い訳をしてくる。もの凄く卑怯なコだ。
「それとも、もしかして棗さんは私に嫉妬しているんですか？」
「なっ」
「彼等も、それに凪くんも私を選んだから……」
「はぁ！？ なに言って――」
思わず感情的になって怒り任せに言い返しそうになったけれど、なんとか急ブレーキを掛けて怒鳴るのを制止。
”このままキレたらこのコの思うツボだ”って冷静になったから。
「本当のこと言われちゃったから図星ですか？」
「あなたと一緒にしないで」
「はい？」
「茉莉愛ちゃんは、別に凪じゃなくても良かったんじゃない？」
勝ち誇った顔をする彼女に、こちらも平然と現実を突きつける。
「欲しかったものは《《特別な》》1人じゃなくて、男なら誰でも良かった。ただ誰よりも好かれているって優越感に浸りたかったんじゃない？」
形勢逆転の一手だったのか茉莉愛ちゃんの顔つきはみるみる険しくなり、先程の余裕な態度とは異なり不快さを全面的に出してきた。
