きまりが悪いせいか、しおらしい顔つきでしっかりと目を合わせようとはしない彼女に私の表情もつい強ばってしまい『まずい』と感じる。
ダメダメ。仕事に個人的な感情を持ち込むのは、と。
「どうしたの?」
あくまでこれは仕事なんだと気を取り直して、変に悟られないようになるべく普通を意識しながら問いかけた。
「会場の準備が終わったので、1度見てもらった方がいいと思って……」
彼女もまた仕事の話《《だけ》》で、言い終わるとこの場から離れようと体の向きを変える。
それなのに私は……
「待ってっ」
無意識に呼び止めていた。
いや、実際のところ無意識というのはおかしいかもしれない。ここのところの出来事について話がしたかったのは事実だし、このタイミングではあるけれどちゃんと聞きたかったから。
私の呼び止めに茉莉愛ちゃんは足を止め、躊躇い気味に後ろを振り返って『なんですか?』と、ふてぶてしく返事をする。
「茉莉愛ちゃん、このままこんな事を続けていて本当にいいの?」
「なんの話です?」
「複数の男性に好意を持って遊んで……そんなの続けていたらここの評判にも関わる事なのよ? わかってる?」
凪が関わる話で言いたい事も聞きたい事もいろいろあったけれど、まずは冷静に自分の立場として伝えなきゃと思い口を開く。



