それから1時間ほどお酒を交わし私はタクシー、彼は徒歩で帰宅。
結局、桐葉さんの言いたかった事は最後までわからず終いだったーーー
***
翌日いつものように出勤すると、珍しく先に凪が到着していた。それもどうやら1人で。
「おはよう、凪」
「うん、おはよ」
「……今朝は早いじゃん」
「そう?」
気を紛らわそうとしているのか、就業時間でもないのにパソコンを開いてもうさっそく仕事を始めている。
その表情は険しく返事も素っ気なくて、イライラしているようにも見える。
こんな凪が気になってしまい、余計な事なのは承知の上で聞いて見ることに。
「昨日は……あれから彼女とは話が出来たの?」
私のその一言に凪はキーボードを打つ手をピタリと止めて、更に不機嫌な顔で答える。
「いや。話どころか茉莉愛と顔も合わせてない。俺が寝るときにはいなかったから、何時に帰ってきたのか知らないし。それに今朝は顔を見る気になれなくて俺だけ早く出てきたんだ」
「そう……だったんだ」
思った以上に状況は悪いみたい。
それに茉莉愛ちゃんが何時に帰ってきたかわかんないって、夜遊びしてるって事? 度を超えていない?
「情けないよな……」
「え……」
「こんな事になって、それを元カノに話してんだから。笑えるよマジで」
ハハッと自嘲めいて笑うその表情は、目を見開いて少し不気味に思えた。



