「それで?」
しっとりとした気分を味わっている最中の、桐葉さんから急に現実に引き戻された。
「と、言いますと?」
マスターから渡されたおしぼりで手を拭きながら、敢えて素知らぬ顔して聞き返す。
「元カレと無事に和解できた感想は?」
「そんなもの……別にありませんよ」
凪との事を聞きたがっているのは容易にわかったけど感想なんてもちろん言うつもりなんてなくて、出されたお通しを口にする。
「実際お前はどうなんだよ。元カレの浮気相手が浮気していて、それを知った元カレの落ち込んだ姿を見て」
「なんですか、そのややこしい相関図」
「間違ってはいないだろ」
「……まぁ」
確かに間違いじゃない。凪は私から茉莉愛ちゃんに乗り換えて、なのにその浮気相手は別の男性に浮気していて、そしてそれを思い知らされている。
そんなのーーー
「どう……なんですかね。別になんとも思っていないんじゃないですか?」
マスターから運ばれてくるおつまみの皿に箸をつけながら、他人事なように曖昧に言葉を濁す。
「ふーん……」
答えたくない私の気持ちを察したのか、桐葉さんはそれ以上干渉してくる訳でもなく黙って自分のお酒を飲んでいる。
なんかもしかして、微妙な空気にしてしまった?



