顔を上げた凪は、力なく情けない表情を浮かべながら私に問いかける。
「瑠歌は気づいていたんだろ? だから俺にあんな事を……」
そこには、私の言った意味を理解したみたいだった。
「『茉莉愛の事を知るべきだ』って言われてから、その言葉が引っ掛かってた。それからアイツの行動が気になってきて、見えなかったものが見えてきたんだ。嫌でも気付かされたよ。でも、もっと早く知るべきだった」
1つ1つの言葉には重みがあり、そこには後悔も含まれているようにも思える。
だからこそ、何も返せない……
「ざまぁみろって話だよな」
「そんなの思ってないっ」
自嘲して笑う凪に否定してみるも、彼の表情は曇ったまま晴れる事はない。
同情するつもりも、そんな言葉を掛けるつもりもない。だけどその代わり、私はこの人に大事な事を聞きたかった。
「凪はこれからどうするの?」
現実を受け止めたあと、まだ彼女を愛していけるのか。どう向き合っていくのかをーーー
「どうする……か。今はまだ頭の整理が出来ないけど、少し考えてみる……」
あまりにショックだったのか肩を落として憔悴しきっている彼に、これ以上は追及できなかった。
もう余裕なんてないはずなのに……
「ありがとう……瑠歌」
私にお礼なんて言うんだから。
「俺の事を気にしてくれて、嬉しかった」
優しい言葉なんて、久しぶりだ。



