最後の恋って、なに?~Happy wedding?~


 今カノを置いてきたまま元カノの後を追って聞き出そうとするとか、そこまでして私を疑うの?
 
 そう思うと意地になって余計に何も言いたくなくなる。

「本当になんでもないから」
「じゃぁさっきのはなんだよ。俺に何を見て知って気付けって?」
「それは……」

 さっきまでの強気な姿勢から、今度は逃げ腰に言葉が詰まってしまう。

 目を覚まして欲しかったのは本当。だけど茉莉愛ちゃんの浮気現場らしいところを見ちゃったからって、そんな事……言える訳がない。どっちを信じるかなんて考えなくてもわかるから。
 だからいくら問いただされても、自分の目で見て現実を受け止めて欲しかった。

 私が言えるのは1つだけ。

「凪はもっと茉莉愛ちゃんを知るべきだと思う。じゃなきゃ傷つくのは凪自身だよ」

 伝わっていないのは百も承知で私は最後にそれだけ残し、また彼に背を向けて階段を1段、右足で踏み込んだのとほぼ同時だった。

「ちょっと待てって!」

 後ろから凪が行く手を止めようと私の左腕を掴まれ、前に進む反発から体が後ろにバランスを崩してしまう。

「っ!?」

 やばいっ 落ちるっ!

 気持ちが慌てたせいで狭い階段の踏み面に足が(もつ)れ、嫌でも真後ろにいた凪の方に体が持っていかれる。
 咄嗟に彼に掴もうとしたのは不可抗力。だけどその前に凪が先に私の手を取り、抱きとめるように全身で支えてくれた。